1.概要
ひとことで理解する
Qi2とは、スマートフォンと充電器を磁石で適切な位置に合わせて充電する、新しい世代のワイヤレス充電規格です。初期のQi2は最大15W、その後に登場した「Qi2 25W」は最大25Wの充電に対応します。
目的・役割
従来のワイヤレス充電では、スマートフォンと充電器の位置が少しずれるだけで、充電が遅くなったり、発熱が増えたりする場合がありました。Qi2は磁石で充電用コイルの位置を合わせ、置き間違いや位置ずれを減らすことを主な目的としています。
また、メーカーごとに異なりやすかった磁気式ワイヤレス充電を共通規格にまとめる役割もあります。認証された異なるメーカーの製品を組み合わせやすくし、充電器やスタンドなどの選択肢を広げています。
略称・正式名称
Qi2は頭文字を並べた略称ではなく、「Qi」の次世代を表す名称です。「チーツー」と読みます。Qiは中国語の「気」に由来する呼び名で、規格はWireless Power Consortium(WPC)という業界団体が策定しています。
技術的には、Qi規格のバージョン2で導入された「Magnetic Power Profile(MPP)」がQi2ブランドの中心です。MPPとは、磁石を使って受電側と送電側の位置を合わせる仕組みです。
2.少し詳しく
使用場面
Qi2は、主にスマートフォンと、充電パッド、卓上スタンド、モバイルバッテリー、車載ホルダーなどの間で使われます。磁石で固定できるため、充電しながら画面を見たり、車内でナビを表示したりする場面とも相性がよい規格です。
なお、スマートフォンにケーブルを差し込む必要はありませんが、充電器側には電源が必要です。Qi2は電力を送るための規格であり、写真や連絡先などを転送する通信規格ではありません。
具体例
就寝前にQi2対応スタンドへスマートフォンを近づけると、磁石で充電位置に固定され、そのまま充電が始まります。平置きの充電器のように、コイルの位置を何度も調整する手間を減らせます。
車載ホルダーでは、スマートフォンを磁石で支えながら充電できます。走行中の振動による位置ずれを抑えやすく、ナビを表示したまま使いたい場面にも便利です。ただし、固定力や対応する重量は製品によって異なります。
3.仕組み・動作原理
基本的な仕組み
Qi2による充電は、次のような流れで行われます。
- 充電器へ電源を供給します。
- スマートフォンを近づけると、磁石が充電用コイル同士を合わせます。
- 充電器とスマートフォンが対応状況や必要な電力を確認します。
- 充電器が磁界を発生させ、スマートフォンが電力を受け取ります。
- 温度や充電状態に応じて出力を調整し、満充電時などには電力を抑えます。
構成要素
主な構成要素は、充電器側の送電コイル、スマートフォン側の受電コイル、位置を合わせる磁石、電力を制御する回路です。送電コイルは電気から磁界を作り、受電コイルはその磁界を再び電気へ変えます。
さらに、充電器へ十分な電力を渡すUSB充電器とケーブルも重要です。Qi2 25W対応の充電パッドを使っていても、接続するUSB充電器の出力が不足していれば、最大速度では充電できません。
詳しい仕組み
充電器の送電コイルに交流電流を流すと、変化する磁界が発生します。その磁界をスマートフォンの受電コイルが受けると電圧が生まれ、内部の回路がバッテリーを充電できる直流電力へ整えます。この方式を「電磁誘導」といいます。
充電中は、スマートフォンが必要な電力などの情報を充電器へ返し、充電器が出力を調整します。また、異物による電力損失や温度上昇を監視し、必要に応じて出力を下げたり停止したりします。磁石でコイルを正しく重ねやすくすることが、電力の無駄や余分な発熱を抑えるうえで役立ちます。
4.種類・規格・対応状況
種類・規格・バージョン
製品を選ぶときは、細かな仕様番号よりも、次の区分を確認すると分かりやすいでしょう。
| 区分 | 磁石による位置合わせ | 規格上の最大出力 | 主なポイント |
|---|---|---|---|
| 従来のQi | 必須ではない | 5Wまたは最大15W | 実際の出力は機器の組み合わせで異なる |
| Qi2 | あり | 最大15W | MPPによる磁気固定に対応 |
| Qi2 25W | あり | 最大25W | Qi2の利便性を保ちながら高速化 |
Qi2は2023年のQi v2.0で最大15WのMPPとして登場しました。2024年のv2.1では、後付けの認証ケースを利用する仕組みなどが加わり、2025年のQi v2.2.1では最大25Wに対応した「Qi2 25W」が導入されています。
2026年9月時点でWPCが案内する最新仕様はQi v2.3ですが、v2.3は主に内部の電力制御に関する更新です。利用者が製品を選ぶ際は、現在も「Qi2」と「Qi2 25W」のどちらに対応するかを確認するのが実用的です。製品説明で「Qi2.2」と書かれることもありますが、最大25W対応製品の消費者向け名称はQi2 25Wです。
Qi2 Readyとは
Qi2 Readyは、スマートフォン本体と認証された磁気ケースを組み合わせて、Qi2の使用感を実現する方式です。本体だけでは磁石を内蔵していない場合があり、指定されたケースとの組み合わせが利用条件になります。
一般的な磁気リングや「MagSafe対応」とだけ書かれたケースを装着しても、それだけでスマートフォンがQi2対応に変わるわけではありません。Qi2 Readyを利用する場合は、機種とケースの組み合わせが認証・指定されているかを確認してみましょう。
利用条件・対応状況
Qi2の最大速度を利用するには、スマートフォンと充電器の両方が同じ出力区分に対応している必要があります。たとえば、Qi2 25W対応スマートフォンでも、充電器が従来のQi2なら規格上は最大15Wです。反対の組み合わせでも、スマートフォン側が受け取れる範囲に制限されます。
対応するUSB充電器とケーブル、適切なケースも必要です。「最大15W」「最大25W」は常に出続ける電力ではなく、バッテリー残量、温度、使用中のアプリなどに応じて下がる場合があります。
従来のQi製品と組み合わせても基本的な充電ができる場合は多いものの、磁気固定やQi2の最大出力までは利用できません。すべての旧製品との動作が一律に保証されるわけではないため、購入前にスマートフォンと充電器の対応表記を確認すると安心です。
5.特徴・評価
特徴
Qi2の主な特徴は、次の4つです。
- 磁石でコイルの位置を合わせやすい
- Qi2は最大15W、Qi2 25Wは最大25Wに対応する
- メーカーをまたいだ互換性を重視している
- 認証試験で安全性や相互運用性を確認する
Qi2またはQi2 25Wのロゴは、所定の認証試験を通過した製品だけが表示できます。単に磁石が付いている製品と、Qi2認証製品は同じではありません。
メリット
もっとも分かりやすいメリットは、スマートフォンを置く位置で迷いにくいことです。コイルのずれによる充電失敗を減らしやすく、充電スタンドや車載ホルダー、着脱式モバイルバッテリーなども使いやすくなります。
位置が整うことで電力を効率よく伝えやすくなり、ずれた状態と比べて余分な発熱も抑えやすくなります。Qi2 25W対応の組み合わせなら、従来の最大15Wより短時間で充電できる可能性があります。
デメリット・注意点
Qi2であっても、一般に高出力の有線急速充電より遅い場合があり、電力変換時の損失もなくなるわけではありません。速度を最優先する場面では、有線充電のほうが向くことがあります。
Qi2は本体側のコイルや磁石などが関係するため、非対応端末をソフトウェア更新だけで完全対応にすることはできません。また、厚いケース、金属板、カード収納ケースなどは、固定力や充電に影響する場合があります。充電器とスマートフォンの間にコイン、鍵、カードなどを挟まないようにしましょう。
6.不具合・トラブル
よくある不具合と対処方法
充電が始まらない場合は、まずスマートフォンと充電器の対応規格を確認します。ケースや磁気アクセサリーを外して付け直し、それでも改善しなければ、USB充電器とケーブルを交換して確認します。
充電が遅い場合は、両方がQi2 25Wに対応しているか、必要な出力のUSB充電器を使っているかを確認してみましょう。高温時、満充電に近いとき、動画視聴やゲームをしながらの充電では、保護のため速度が下がることがあります。
磁石で固定できない場合は、端末がQi2 Readyで、専用の認証ケースを必要としていないかを確認します。Qi対応でもQi2非対応の端末には、位置合わせ用の磁石が内蔵されていないことがあります。
熱くなって充電が止まる場合は、いったん充電をやめ、直射日光を避けた涼しい場所で温度が下がるのを待ちます。ケースや金属物を外し、充電中の負荷が大きいアプリも終了します。異常な発熱、におい、変形がある場合は使用を中止してください。
7.似ている用語・関連用語
似ている用語との比較
| 用語 | Qi2との違い |
|---|---|
| Qi | ワイヤレス充電規格全体の名称です。従来のQiでは磁石による位置合わせが必須ではありません |
| MagSafe | Appleの磁気式充電・アクセサリー技術です。Qi2のMPPは、Appleが提供したMagSafe技術を基礎に標準化されました |
| MagSafe対応・互換 | 主に磁気アクセサリーへ装着できることを示す表現です。Qi2認証や最大15W・25W対応を保証する表示ではありません |
| Qi2 Ready | 認証されたスマートフォンと磁気ケースを組み合わせてQi2を利用する方式です |
Qi2とMagSafeは磁石の配置などに共通点があり、物理的に装着できる組み合わせもあります。ただし、充電速度、認証、独自機能まで常に同じとは限らないため、それぞれの対応表記を確認する必要があります。
関連用語
- MPP:Magnetic Power Profileの略です。磁石で充電位置を合わせる、Qi2の中心となる方式です。
- EPP:Extended Power Profileの略です。従来のQiで最大15Wまで扱う方式で、磁石は必須ではありません。
- FOD:Foreign Object Detectionの略です。金属などの異物による異常な電力損失を検知し、出力の制限や停止につなげる仕組みです。
- USB PD:USB経由で電力を供給する規格です。Qi2充電器へ十分な電力を入力するために使われることがあります。
8.歴史・背景
登場した背景
WPCは2010年に初期のQi規格を公開し、メーカーをまたいで使えるワイヤレス充電を広げてきました。一方で、充電位置のずれや、メーカー独自の磁気式充電が混在するという課題も残っていました。
そこで、Appleから提供されたMagSafeの技術を基礎にMPPを標準化し、2023年にQi2が登場しました。磁石による位置合わせを共通規格へ取り込み、充電器やアクセサリーを幅広い端末で使いやすくすることが狙いです。
変化と普及
初期のQi2は最大15Wでしたが、2024年には認証ケースと組み合わせるQi2 Readyなどが加わり、2025年には最大25WのQi2 25Wが登場しました。現在はスマートフォンだけでなく、充電スタンド、モバイルバッテリー、車載機器などにも対応製品が広がっています。
今後も出力や制御方法の改善が進むと考えられます。ただし、ワイヤレス充電対応端末のすべてがQi2対応とは限らないため、しばらくは「Qi対応」「Qi2対応」「Qi2 25W対応」の違いを確認することが大切です。
9.まとめ
Qi2は、磁石でスマートフォンと充電器のコイルを合わせ、位置ずれによる充電失敗や余分な発熱を抑えやすくしたワイヤレス充電規格です。通常のQi2は最大15W、Qi2 25Wは最大25Wに対応します。ただし、最大速度には端末・充電器・USB電源・ケースの対応が必要です。磁石が付いているだけではQi2認証製品とは限らないため、購入時はQi2ロゴと対応出力を確認すると分かりやすいでしょう。
