USBハブには、主に「バスパワー」と「セルフパワー」という2つの給電方式があります。見た目が似ていても、接続できる機器や動作の安定性が異なるため、用途に合った方式を選ぶことが重要です。
1.概要
ひとことで理解する
バスパワーは、パソコンやスマートフォンのUSB端子から電気を受け取って動く方式です。
セルフパワーは、ACアダプターなどの外部電源から電気を受け取って動く方式です。簡単にいえば、「パソコンから電気をもらうか、別の電源を用意するか」という違いです。
| 比較項目 | バスパワー | セルフパワー |
|---|---|---|
| 主な電源 | パソコンなどのUSB端子 | ACアダプターなど |
| 電源ケーブル | 基本的に不要 | 必要 |
| 持ち運び | しやすい | やや不向き |
| 供給できる電力 | 少なめ | 多めで安定しやすい |
| 向いている機器 | マウス、キーボードなど | 外付けHDD、光学ドライブなど |
目的・役割
USBハブは、パソコンなどにある1つのUSB端子を、複数のUSB端子に増やすための機器です。ただし、接続したUSB機器を動かすには、データ通信だけでなく電気も必要になります。
バスパワーとセルフパワーは、その電気をどこから確保するかを決める仕組みです。消費電力の少ない機器であればバスパワーでも使用できますが、多くの電気を必要とする機器では、セルフパワーのほうが安定しやすくなります。
略称・正式名称
バスパワーは英語で「Bus-powered」、セルフパワーは「Self-powered」と表記されます。いずれも略称ではなく、USB機器がどこから電力を受け取るかを示す呼び方です。
製品によっては、セルフパワーが「外部電源方式」「ACアダプター給電」、バスパワーが「USB給電」などと表記されていることもあります。
2.少し詳しく
使用場面
バスパワーのUSBハブは、ノートパソコンのUSB端子を手軽に増やしたい場面でよく使用されます。マウス、キーボード、USBメモリーなど、比較的消費電力の少ない機器との組み合わせに向いています。
セルフパワーのUSBハブは、外付けHDD、外付け光学ドライブ、キャプチャーボード、オーディオ機器などを接続する場面に適しています。また、多数のUSB機器を常時接続したい場合にも有効です。
具体例
ノートパソコンにマウス、キーボード、USBメモリーを接続する程度であれば、バスパワーの4ポートUSBハブでも動作する可能性が高いでしょう。電源ケーブルが増えないため、持ち運びにも便利です。
一方、外付けHDDとWebカメラなどを同じハブに接続すると、バスパワーでは電力が不足することがあります。このような場合は、ACアダプター付きのセルフパワーUSBハブを使用すると、動作が安定しやすくなります。
3.仕組み・動作原理
基本的な仕組み
バスパワーでは、次のような流れで電力が供給されます。
「パソコンのUSB端子→USBハブ→接続したUSB機器」
パソコンの1つのUSB端子から受け取った電力を、USBハブ本体と接続機器で分けて使用します。
セルフパワーでは、次のような流れになります。
「ACアダプター→USBハブ→接続したUSB機器」
パソコンとのUSB接続は主にデータ通信に使い、USB機器を動かすための電力は外部電源から確保します。
構成要素
主な構成要素は次のとおりです。
・アップストリームポート:パソコン側と接続する端子
・ダウンストリームポート:マウスや外付けHDDなどを接続する端子
・ハブコントローラー:複数のUSB機器との通信を振り分ける部品
・VBUS:USBケーブル内で電力を運ぶ線
・外部電源端子:セルフパワー用の電源を入力する端子
セルフパワー対応製品の外部電源端子には、丸型のDC端子やUSB Type-C端子などが使われます。製品によって必要な電圧や電力が異なるため、指定されたACアダプターを使用する必要があります。
詳しい仕組み
一般的なUSB 2.0の接続では、USB機器が使用できる電流は初期状態で100mAが基準となり、接続後に必要な情報をやり取りすることで最大500mAまで使用できます。USB 3.2の通常の1レーン接続では、150mAを1単位として、最大900mAが標準的な基準です。
従来型のバスパワーハブでは、この電力をハブ本体と複数の機器で共有します。例えば、パソコン側のUSB端子から受け取れる電力が限られている場合、各ポートが同時に最大電力を使えるわけではありません。
セルフパワーハブは外部電源を利用するため、USB 2.0では1ポート当たり500mA、USB 3.2では900mAといった規格上の電力を各ポートに供給しやすくなります。
ただし、実際に供給できる電力は、ハブの設計やACアダプターの出力によって異なります。ポート数が多くても、すべてのポートで同時に最大電力を使用できるとは限りません。
4.種類・規格・対応状況
種類・規格・バージョン
USBハブの給電方式は、大きく次の3種類に分けられます。
・バスパワー専用:パソコンなどのUSB端子だけで動作
・セルフパワー専用:外部電源を接続して動作
・両対応:外部電源の有無によって動作方式を切り替え
両対応ハブは、外部電源を外すとバスパワーとして動作します。ただし、その状態では使用できるポートや接続機器が制限されることがあります。
USB Type-Cでは、通常のUSB給電に加えて1.5Aや3Aの電流を供給できる仕組みがあります。そのため、USB Type-C接続のバスパワーハブは、従来のUSB-A接続製品より多くの電力を受け取れる場合があります。
さらにUSB PD(USB Power Delivery)では、機器同士が必要な電力を確認してから給電します。現在のUSB PDは規格上最大240Wに対応していますが、すべてのハブが240Wを扱えるわけではありません。
利用条件・対応状況
バスパワーハブを使用するには、接続元のUSB端子がハブとUSB機器を動かせるだけの電力を供給できる必要があります。スマートフォンやタブレットでは、パソコンより供給電力が少ない場合があるため注意が必要です。
セルフパワーハブでは、対応するACアダプターやUSB充電器が必要です。USB Type-Cから電源を入力する製品では、必要なワット数とUSB PDへの対応状況も確認しましょう。
USB 2.0やUSB 3.xなどの新旧規格には基本的な互換性がありますが、通信速度は接続した機器、ハブ、ケーブル、パソコンのうち、最も遅い規格に合わせられます。給電方式がセルフパワーでも、データ転送速度そのものが速くなるわけではありません。
5.特徴・評価
特徴
バスパワーとセルフパワーの主な特徴は次のとおりです。
・バスパワーは電源ケーブルが不要で持ち運びやすい
・セルフパワーは消費電力の大きい機器に対応しやすい
・接続台数が増えるほど、セルフパワーの利点が大きくなる
・給電方式とUSBのデータ転送速度は別の要素
・両対応製品は用途に応じて使い分けられる
メリット
バスパワーのメリットは、USBケーブルを接続するだけで使える手軽さです。ACアダプターを持ち歩く必要がなく、外出先でも使用しやすい点が特徴です。
セルフパワーのメリットは、パソコン側のUSB端子にかかる電力負担を抑えられることです。複数のUSB機器を接続しても電力不足が起こりにくく、外付けストレージなどを安定して使用しやすくなります。
デメリット・注意点
バスパワーは使用できる電力が限られるため、機器を増やすと認識されなかったり、途中で切断されたりすることがあります。特に外付けHDDや光学ドライブなどは、起動時に一時的に大きな電力を必要とする場合があります。
セルフパワーはACアダプターやコンセントが必要になるため、持ち運びにはあまり向きません。また、セルフパワー対応というだけでは急速充電できるとは限りません。スマートフォンを充電したい場合は、USB BC 1.2やUSB PDなど、充電規格への対応も確認する必要があります。
USB PDパススルー対応ハブでは、接続した充電器の電力の一部をハブ自身が使用します。そのため、「100W入力対応」と書かれていても、パソコンにそのまま100Wが届くとは限りません。
6.不具合・トラブル
よくある不具合と対処方法
USB機器が認識されない場合は、次の順番で確認します。
1.USB機器を減らし、1台だけ接続する
2.ハブを使用せず、パソコンへ直接接続する
3.別のUSB端子やケーブルを試す
4.セルフパワー対応ハブでは外部電源を接続する
USB機器が途中で切断される場合や、外付けHDDから異音がする場合は、電力不足の可能性があります。重要なデータを扱っているときは使用を中止し、セルフパワーハブまたはパソコンへの直接接続を試してください。
スマートフォンを充電できない、または充電が遅い場合は、そのポートが充電用ではない可能性があります。「PD」「Charging」「BC」などの表示と、ポートごとの出力を確認しましょう。
パソコンをスリープすると接続機器の電源が切れる場合は、パソコン側の省電力設定が関係していることがあります。ただし、スリープ中に給電を継続できるかどうかは、パソコンやハブの仕様によって異なります。
7.似ている用語・関連用語
似ている用語との比較
「USB Type-A」と「USB Type-C」は端子の形を表す用語であり、バスパワーとセルフパワーは電源の取り方を表す用語です。USB Type-Cだから必ずセルフパワー、USB Type-Aだから必ずバスパワーというわけではありません。
「USB PD対応」もセルフパワーと同じ意味ではありません。USB PD対応ハブには、パソコンへ給電できる製品、接続機器へ給電できる製品、その両方に対応する製品があります。
「ドッキングステーション」は、USB端子だけでなく映像出力や有線LANなどもまとめて増設する機器です。USBハブより機能が多く、外部電源を使用する製品が多い傾向にあります。
関連用語
・USB PD:USB Type-Cを利用して機器間で電力を調整する給電規格
・USB BC 1.2:USB端子から充電用の電力を供給する規格
・VBUS:USBケーブル内で電力を運ぶための線
・アップストリーム:USBハブから見たパソコン側の接続
・ダウンストリーム:USBハブから見た周辺機器側の接続
8.歴史・背景
登場した背景
USBは、周辺機器の接続方法を統一し、データ通信と電力供給を1本のケーブルで行えるようにするために登場しました。USBハブも初期から規格に含まれており、外部電源を使うセルフパワーと、USB端子から給電するバスパワーが区別されています。
USB 2.0の基本仕様は2000年に公開され、その後も修正や追加仕様が公開されています。
変化と普及
USB 3.xでは、通常のUSB端子から供給できる標準的な電力がUSB 2.0より増えました。さらにUSB Type-CとUSB PDの普及により、パソコンへの充電と周辺機器への給電を1つのハブで行える製品も増えています。
現在は単純な「バスパワーかセルフパワーか」だけでなく、入力できる電力、パソコンへ出力できる電力、各USB端子の出力を個別に確認することが重要です。
9.まとめ
USBハブのバスパワーは、パソコンなどのUSB端子から電気を受け取る手軽な方式です。マウスやキーボードなどには向いていますが、使用できる電力は接続元のUSB端子と複数の機器で共有します。セルフパワーは外部電源を使うため、外付けHDDや多数の機器を安定して接続したい場合に適しています。迷ったときは、持ち運びやすさを優先するならバスパワー、電力と安定性を優先するならセルフパワーと覚えておくとよいでしょう。
